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混乱と破壊によってある一定の秩序が生まれる。いつもそうやって新しい時代が始まる。
ビッグバンで宇宙が誕生したように。

次の時代を暗示するかのように、とつぜん激しい雨が降った。
そしてすぐに雨はあがって青空が広がった。

新しい空は眩しく深かった。

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夕暮れが少しづつ早くなってきた。昼間はあいかわらず残暑が厳しいが、さすがにもう9月の半ばなのだ。スカイツリーの横に、朱色にそまった蜘蛛の巣のような雲がうかんでいる。蝉の声はリンリンリンと鳴く虫の声に変わる。

一瞬、風が吹きぬけた。
歩行者用の信号が、カチッカチッと青色を点滅している。
半ズボンの小学生が風を追うように駆けていった。

雲の流れはわりとゆっくりで、蜘蛛の巣はしだいに形を変えながら色を消してゆき、右に流れる。
そろそろ月が出る頃だ。

わっさわっさと、それはそれは大きなおっぱいが上下に揺れながらぼくに迫ってきた。
ぼくはバックミラー越しに、そのおっぱいに暫く目がくぎ付け状態になっていたが、その若い女性がドアをコンコンと叩いた音に、ハッと我に返った。

「あの黒い車を追ってちょうだい! 急いで!」
そのおっぱい、いや・・女性は、後部座席から前かがみ状態に大きな胸をシートにおしつけながら、前の黒い車を睨んでいる。  また追跡かよ・・・

「うん、今タクシー乗った。浜松町から田町の方へ向かってる。 いや、ひろしだけだよ。あ、運転手さん、気づかれないようににすこし離れて走ってください。あ、左車線に移動して!」
女性はケイタイを掛けながら、同時にぼくにもいろいろと指示をしてくる。
「この先の交差点て右折できるのかな、うん、たぶんよう子のところに行くんだと思う。右折できないんならまだまっすぐ行くと思うんで、このまま左車線にいてください」
もはやケイタイに喋っているのかぼくに喋っているのかわからない状態になってきたので、ぼくは前の車を見逃さないことだけに集中した。

「あ、あそこから行くんだ、ちがう、よう子のところじゃないみたい。たぶんあそこから回りこむと思うので、後を追わないでその角で止めてください」
女性はケイタイを切ると、大きな胸で深呼吸をした。

「○○○円になります」
「おつりはいらないです」
千円札を2枚出して、女性はまたそのおおきなおっぱいを上下に揺らしながら横断歩道を駆けていった。
 

 日曜日は朝から晴れていた。その晴れた青空で豆のはじけるような花火の音がした。うちあげられたボールがわれて、なかから小さな落下傘が三つ、四つゆっくりと歩行者天国で賑わう大通りに舞いおりてくる。アイスクリームをなめていた子供や若い恋人たちが笑い声をあげながら、その落下傘を拾いに走った。
 花火の音は勝呂医院の診察室にまで聞こえてきた。太鼓の音もする。もうしばらくすると町内の若い者たちがかつぐ御輿も出るだろう。神社の周りには露天がずらりと並んでいる。色とりどりの風船やお面を売る店、餅細工の店、鯛やきの店、イカを焼く煙。綿あめがどんどん大きくなっていく。

                                                 「悲しみの歌」


9月はめまぐるしく変化する空模様で始まった。
夕方、西の空に虹の両足が架かっていた。
低気圧が接近中の関東は明日は荒れた天気になるだろうと、ニュースキャスターがやや興奮気味に伝えていた。

この雨で夏が終わる。
9月はいつも突然やってくる。

今でも、届く声がある。
幼い頃に、ずっと遠くから仲良しの友達に呼ばれたような感じで、まっすぐに、無邪気に頭の中に響いてくる声がある。ぼくはそれをまるで生まれたての子猫を抱くように静かに優しく摑みとって、その言葉を繰り返してみる。
あの頃のようにこっちから送ることはできなくなってしまったけれど、受けとることはまだできる。送った子はしっかり僕をつかまえてくれているだろうか。意外と年寄りなのでびっくりしているかもしれない。

                                        「そこへ届くのは僕たちの声」

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