わっさわっさと、それはそれは大きなおっぱいが上下に揺れながらぼくに迫ってきた。
ぼくはバックミラー越しに、そのおっぱいに暫く目がくぎ付け状態になっていたが、その若い女性がドアをコンコンと叩いた音に、ハッと我に返った。
「あの黒い車を追ってちょうだい! 急いで!」
そのおっぱい、いや・・女性は、後部座席から前かがみ状態に大きな胸をシートにおしつけながら、前の黒い車を睨んでいる。 また追跡かよ・・・
「うん、今タクシー乗った。浜松町から田町の方へ向かってる。 いや、ひろしだけだよ。あ、運転手さん、気づかれないようににすこし離れて走ってください。あ、左車線に移動して!」
女性はケイタイを掛けながら、同時にぼくにもいろいろと指示をしてくる。
「この先の交差点て右折できるのかな、うん、たぶんよう子のところに行くんだと思う。右折できないんならまだまっすぐ行くと思うんで、このまま左車線にいてください」
もはやケイタイに喋っているのかぼくに喋っているのかわからない状態になってきたので、ぼくは前の車を見逃さないことだけに集中した。
「あ、あそこから行くんだ、ちがう、よう子のところじゃないみたい。たぶんあそこから回りこむと思うので、後を追わないでその角で止めてください」
女性はケイタイを切ると、大きな胸で深呼吸をした。
「○○○円になります」
「おつりはいらないです」
千円札を2枚出して、女性はまたそのおおきなおっぱいを上下に揺らしながら横断歩道を駆けていった。
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