村の電信柱にはすこし眩しすぎるくらいの街灯がついていて、夜になると燦々と灯るその光をめざして、たくさんの夏の虫たちが集まってくる。黄金虫やちょっと大きめの蝿やちいさなトンボたちや名もない虫たちだ。それを夏の間、まいにち飽きもせずに眺めている少年がいた。ぼくもそういうのを見るのが嫌いではなかったので、時々その少年といっしょに街灯に集まる虫たちを眺めていた。
あるとき、黒い物体が光に向かって突進してきて、街灯にぶつかり、ぽとっと地面に落ちた。少年はすかさずその黒い物体を拾いあげると、持っていた紙袋に入れて走って家に帰っていった。ぼくはわけも分からずにその少年を追っかけて家までいっしょに付いていった。少年は紙袋から拾ったそれをすくい出すと、プラスチックの虫かごの中に無造作にほうり込んだ。虫かごの中にはたくさんのクワガタが入っていて、少年はそれをぼくに誇らしげに見せるのだ。
なるほど、少年は毎日々々電信柱の下でクワガタ狩りをしていたのである。
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