最後の花火は、さっきミカが話題にした線香花火に決めた。垂れ下がった軸の先端に火をつけると、中心の真っ赤な雫の周りに、じりじりと微かな音を立てて、小さな雷のような黄色い光が無数に飛び散った。燃えていく線香花火を見つめながら僕は、もしいま時間が止まったら、もっと奇麗だろうと思った。この小さな雷は、たくさんの細い枝のように、じっと固まって、そしてその固まった光の枝を掌で押したら、きっと飴のようにぱりぱりと崩れて、どんなに素敵な眺めだろうと想像した。
「向日葵の咲かない夏」
「向日葵の咲かない夏」
PR
この記事にコメントする