私は帰り際に、自転車のペダルを漕ぎながら、星が見え始めた夕闇の透き通った空を眺めた。まるで映画のエンディングのような空色だった。いまにも THE END の文字が浮かび上がってきそうだった。私はその空を眺めながら思った。なぜ八月最後の日になると、いつもひとつの物語が終わるような気がするのだろう。明日も明後日も受験勉強をしなければならないのに、時間はずっと続いてゆくのに、なぜ八月三一日だけは特別な気がするのだろう。
「八月の博物館」
「八月の博物館」
PR
この記事にコメントする