あの日見た光は本物だった。
わが母校は1回戦で敗退したのだが、その熱狂的で且つ真摯な応援姿勢が評価されて「最優秀応援賞」なるものを受賞した。対戦相手の校歌斉唱のときにはあたたかい手拍子をおくり、試合後も選手たちは相手の応援席に一礼し、わが応援団も相手の応援団に拍手をおくっていた。そしてなによりも圧巻の迫力ある応援光景。いや、実際見たわけではなく、ラジオで聴いていただけなのだが、それでも試合の熱気と応援の迫力はじゅうぶんに伝わってきた。映像がないだけによけいに音声から想像をかきたてられたのだろう。
1月に久しぶりにシマに帰ったときに、母校の校門をカメラに収めてきた。そして東京にもどる前の日に、同窓の元野球部だったSと酒をのんだ。その時はまだ21世紀枠での「出場候補」という段階だった。高校時代は野球ひとすじだったSは、21世紀枠だろうが甲子園は夢のまた夢で選ばれるのは奇跡にちかい、と酒をのみながら切々と語っていた。
そして出場が決まった日、後輩たちの快挙をSはだれよりも喜んでいた。
試合当日もちろん彼は、船と深夜バスを乗り継いで甲子園まで後輩たちの応援をしにいった。球場にはいって感極まった彼は、ぜんぜん関係のない試合の他校の校歌を聴いただけで早くも涙したのだ。
わが母校が光なら、彼もまた光なのかもしれない。
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客を降ろした後すぐにラジオをつけると、9回の攻撃ランナーなしでキャプテン重原の打席だった。どうしても塁に出たい・・ 3ボールをファーボールと勘違いして思わず1塁へ走りかける。どうしても塁に出たいんだ・・ 粘りに粘って渾身のファーボールを選ぶ。アルプススタンドの割れんばかり歓声を受け、キャプテン重原は満面の笑顔で一塁へと疾走していった。
初恋の君のSちゃんが亡くなったのが去年の1月。その年の11月に高校の同窓のTが逝った。そしておととい、中学の同窓だったKが亡くなったとの連絡がさっきはいる。心筋梗塞の急死だったらしい。何件かメールがあり、その中で、同じ中学の同窓のSも去年の12月に亡くなっていたことを知る。4人が4人ともにそれぞれの思い出がある。今夜は思いっきり酒を飲もう。
見あげるとまっ青な空に9月とは思えない見事な入道雲が湧き、
そのはるか先のたかい位置に筋状のながい雲が流れている。
夏の象徴の入道雲と、秋の空たかく流れる雲が同居している光景。
そのはるか先のたかい位置に筋状のながい雲が流れている。
夏の象徴の入道雲と、秋の空たかく流れる雲が同居している光景。
深夜も1時をまわった頃、大田区の閑静な住宅街を走っていたら、道のまんなかで50代くらいの女の人がエプロン姿のまま両手を振っていた。いやな予感・・がしたが乗車拒否するわけにもいかず、仕方なく車を止めドアを開けた。
「 どちらまでですか? 」
「 この先の国道に出てください 」
と言って女性はハーとため息をついた。
「 実は徘徊老人を探しているんですよ。前もそこの国道を歩いていたもんですから 」
「 ・・・・・・ 」
ハーと今度はぼくがため息をついた。
立会道路から国道1号線を右折して五反田方面へ向かった。
「 ゆっくり走りますね 」
三車線の国道のいちばん左車線を気をつけながらゆっくり走る。警察にも連絡して探していただいてるんですけどねー、すいませんねー、と女性は恐縮しながら車内から目をこらして外をうかがっている。5つ目の信号を越えたあたりにコーヒーの自販機があり、ひとりの老人がそのぼんやりと光る自販機の前に佇んでいた。
「 イター! 」
その声にびっくりして思わず急ブレーキを踏んでしまった。女性は車からとびだし、おかあさーん!と叫び、老人の元に駆け寄った。一言二言なにか言ったあとにふたりで車に戻ってきた。女性はぼくにお礼を言い、さっき乗ったとこまで戻ってくださいと言った。
「 ひとりで出ないでって言ったでしょ 」
「 はいわかりました 」
老人はわりとはっきりとした口調で返事をした。
「 運転手さんも一緒に探してくださったんですよ 」
「 これはこれはどうもありがとうございました 」
老人はやっぱりはっきりとした口調でペコリと頭を下げた。
やがて自宅に到着すると、ほんっとにありがとうございました、と母子(たぶん)は揃って頭を下げた。
タクシーを6年もやっていると、いろんな面白い客や出来事に遭遇する。
タダ乗り未遂家出少女、ワイシャツ血まみれサラリーマン、ハッピバスディ坊さん、つぶやき五郎おばさん、追跡1・2・3、〇〇〇な女(とても書けません・・)、雨の日は機嫌のいいおじさん、 などなど事欠きません。
こんなおもろい商売はありません・・
「 どちらまでですか? 」
「 この先の国道に出てください 」
と言って女性はハーとため息をついた。
「 実は徘徊老人を探しているんですよ。前もそこの国道を歩いていたもんですから 」
「 ・・・・・・ 」
ハーと今度はぼくがため息をついた。
立会道路から国道1号線を右折して五反田方面へ向かった。
「 ゆっくり走りますね 」
三車線の国道のいちばん左車線を気をつけながらゆっくり走る。警察にも連絡して探していただいてるんですけどねー、すいませんねー、と女性は恐縮しながら車内から目をこらして外をうかがっている。5つ目の信号を越えたあたりにコーヒーの自販機があり、ひとりの老人がそのぼんやりと光る自販機の前に佇んでいた。
「 イター! 」
その声にびっくりして思わず急ブレーキを踏んでしまった。女性は車からとびだし、おかあさーん!と叫び、老人の元に駆け寄った。一言二言なにか言ったあとにふたりで車に戻ってきた。女性はぼくにお礼を言い、さっき乗ったとこまで戻ってくださいと言った。
「 ひとりで出ないでって言ったでしょ 」
「 はいわかりました 」
老人はわりとはっきりとした口調で返事をした。
「 運転手さんも一緒に探してくださったんですよ 」
「 これはこれはどうもありがとうございました 」
老人はやっぱりはっきりとした口調でペコリと頭を下げた。
やがて自宅に到着すると、ほんっとにありがとうございました、と母子(たぶん)は揃って頭を下げた。
タクシーを6年もやっていると、いろんな面白い客や出来事に遭遇する。
タダ乗り未遂家出少女、ワイシャツ血まみれサラリーマン、ハッピバスディ坊さん、つぶやき五郎おばさん、追跡1・2・3、〇〇〇な女(とても書けません・・)、雨の日は機嫌のいいおじさん、 などなど事欠きません。
こんなおもろい商売はありません・・